TOP > 連載コラム > トシ中山の「渾身の一撃」 > 第61回「ジュニア選手、U23選手の挑戦」 

第61回「ジュニア選手、U23選手の挑戦」 

季節は秋へと移りトライアスロン・シーズンもいよいよフィナーレに近づいてくる。海外ではハワイ・アイアンマンレースが間もなく開催され2008年を締め括る。
国内では、ジャパンカップ村上大会、銚子大会、そしてローカルではあるが第1回の川崎・東扇島で開催されるスリーエフカップ。これらを経て最終戦、東京港・日本選手権へとつながってゆく。
日本選手権ではどんなドラマが生まれてくるだろう。オリンピック出場組VS次世代を担う若手組。意外な選手の活躍を期待したい。

少し遡った、8月に開催された第10回ジュニア選手権長良川大会。明日の日本トライアスロン界を担う優秀なジュニア選手が集結した。エリート選手でも音を上げるような灼熱のコースで戦いは演じられた。男子、女子、ジュニアA、Bクラスと、どのカテゴリーにおいてもジュニア選手の迫力は素晴らしく、本当に一生懸命戦っていたし、全力で走り、戦っていた。この世代の選手が今後、どのように成長をしてゆくのか、とても楽しみだ。日本選手権では、成績や結果ではなく、その戦い方や内容に注目してほしい。
そんな中でも、特にジュニアB女子の戦いは熾烈を極めた。高橋侑子(東京ベルディ)VS山本奈央(西尾高校)。どちらも世界選手権のジュニア日本代表選手であり、実力もほぼ互角といえる。未完成ではあるが、どちらも魅力的な有望選手だ。

レースは全体的に高橋有利で進んでいったが、スイム、バイク、ランと2人の争いはレース全般に渡って続けられた。そしてクライマックスは死闘と呼ぶに相応しい壮絶な戦いとなった。結果的には山本が高橋を逆転したが、その内容は互角といえよう。2人には「勝つことに」に対する執念を見せてもらった。
自分の限界を超えて走る姿を久しぶりに目にした。しかもエリート・クラスではなく、ジュニア・クラスで。ここ最近のエリートと呼ばれる選手に一番欠けているもの、トップ選手が失いつつあるトライアスリートの原点をこの2名は持っていた。スピードの違いはあるけれど、日本選手権や世界選手権をイメージさせるぐらいの迫力ある戦いを見せてもらった。日本選手権で、この2名のジュニア選手の力がどこまで通用するか。暖かい目で見守ってほしい。

椿、大谷、久保埜、工藤、宇都宮、細田、ジュニア男子界のエリート選手達には、田山、山本の2強選手と戦うことで「世界のレベル」をリアルに感じてほしい。現状のままでは、とても世界に追いつけないことを自分の身を持って知ることができる大きなチャンスが日本選手権だ。
東京・お台場で開催されるこの大会はトライアスロン関係者ばかりでなく、トライアスロンを知らない人たちの注目を浴びるチャンスでもある。偶然に通りがかった人達が思わず足を止めて観入ってしまうような熱い戦いを演じて欲しい。

IMG_4920MSPO
ヤングホープ、高橋侑子(真ん中)と山本奈央(右)。その秘めたる底力をオリンピック組に見せ付けてほしい。

IMG_4919MSPO2
ジュニア男子のレベルも低くはない。しかし小手先の技術を磨くことよりも本質的な「戦う心」が磨かれなければ生き残ることはできない。大化けしてくれることを期待する。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

Copyright © 2015 Neo System Co., LTD. All Rights Reserved.