今回はNHKの放映も決定しており否が応でも盛り上がる(11月11日 NHK BS-1)。
本音を言えば、BIKEコースが完全なフラットで味気ないコース設定。一歩間違えればスローな展開になり、ツマラナイ内容になる危険性もはらんでいる。また先行する選手にとっては不利にもなりがちでもある。
しかし、お台場というシチュエーション、そして観客の数、テレビカメラがそれを許さない。選手達の勝負に賭ける心意気が無意識の中でレース展開を速めてゆく。女子は上田藍選手が初優勝。庭田清美が欠場したことは残念であったが、こういうときにこそニューヒロインはやってくる。事前の予想を裏切らない熾烈な争い。最後には関根、井出といったランニング出身選手を制して優勝を遂げた。ランナーでなくてもRUN勝負で勝てる。庭田選手に続き、そのことを証明した。決して関根や井出が遅かった訳ではない。だが間違いなく、その選手達を力でねじ伏せたのだ。
もちろん世界に向けての課題も多い。その課題は本人が一番理解していると思うので、この勝利を喜びつつ更なる進化を遂げて欲しい。
RUNでは、一時的とはいえ先頭を突っ走った古谷あかね、田中敬子。この2選手と共にBIKE終了時点までで、優勝候補3名に2分以上の差をつけた先行グループの崎本、足立、中島、西、浅沼には敢闘賞を与えたい。男子は田山寛豪が2年連続、4度目の優勝を飾る。予想を上回る進歩を遂げていたことを嬉しく思う。
スタート前に「勝負への執念を見せる」と断言していた山本良介は4位に沈む。確かに結果は惨敗であったが、自らに「優勝する」というプレッシャーを本気で掛けて初めて臨んだこのレース。次には大きな進歩を遂げてくれているだろう。
福井英郎の2位は嬉しくもあるが、コーチ兼選手の福井に勝った選手が田山だけとは悲しい限りだ。それだけ福井が「巧い」ということか。
杉本は昨年の準優勝以来、泣かず飛ばずであったが、ここにきて戦線復帰した。不安要素は多いものの来年に期待ができる。
他にも、長谷川裕一のBIKE終了時点までの力、SWIMで失敗したとはいえ細田雄一の猛烈な追い上げ。見ていて飽きることはなかった。
普段のジャパンカップや、ワールドカップでもこれぐらいの迫力と執念を見せてくれれば、もう少し世界でも戦える。だが普段のレースでは今回のような「絶対勝つ」という気迫がみられない。このような積み上げができていないことが、男子選手が世界であと一歩通用できない理由だろう。
さて女子はエリート勢に加えて、25歳以下の若手も賑やかだ。BIKEの先頭グループはほぼこの年齢層で占められた。更にはティーンエイジャー選手の活躍も目立つ。10位の佐藤優香、12位の蔵本葵、15位の高橋侑子、16位の山本奈央と20位以内に4名が入っている。
男子は全体のレベルが接近していることもあり10歳代では28位の宇都宮涼太が最高位だった。やはり課題は男子に多い。
来年は北京五輪。誰が代表となるにしても、今のままでは全く通用しないことは選手自身が一番理解しているはず。
各自がしっかりと自覚をして次期シーズンに臨むことを期待する。
「俺が(私が)、明日の日本のトライアスロン界を背負って立つ!」
強く、速く、そして誰からも尊敬される選手になることを目標に挑戦していってほしい。
(写真1)
優勝者の素敵な笑顔。その笑顔を支えるのは周囲の支援者だ。確かに「SWIM
は遅かった」。しかし「トライアスロンが強かった」上田藍選手とご両親。
(写真2)
男子の上位3名。田山には裏切られた!! 私の予想を上回る進化を遂げていた。
「チャンピオン」という名前に恥じない戦い方と勝ち方だった。
(写真3)
次こそは「勝利への執念」を見せ、大舞台での優勝を期待する。
山本良介のプライドはゴミとなるか金メダルとなるか? 答えを出すのは彼自身だ。
(写真4)
BIKE終了時に優勝候補との差は2分。「優勝するのはコイツか??」と番狂わせを期待した。怪我と戦いながら、シーズン最後まで勝負を貫いた田中敬子選手とチームゴーヤー監督千葉智雄。
(写真5)
骨折から回復。SWIMは、わずか10日間の練習のみで戦線復帰。恐るべき期待の星・井出樹里。BIKEで落車をしない技術の修得が急がれる。気迫と根性は日本一かもしれない。
(写真6)
日本の男子トライアスロン界を背負う選手達。
この中の誰かが「俺こそが世界最強だ!」と言える日が来ることを期待する。
中山俊行プロフィール
中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本の
トライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタート ライアス
ロン」。
【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督