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第51回「日本人の可能性!」

2007年12月1日、ITUワールドカップ最終戦エイラート大会。この日は日本のトライアスロン史に残る歴史的な日となった。
田山寛豪が日本人として初めてワールドカップで頂点に立つ。
勝因は・・・強豪選手が勢ぞろいしていない。コースが安易だった。気候に恵まれた。運に恵まれた。・・・全く関係ない!
ガチンコ勝負の中で、田山が自らの力で、勝利をもぎ取ったのだ。
この勝利は「日本人でもトライアスロンの舞台で世界一になれるかもしれない」という可能性を具体的に示した素晴らしい結果だ。私は素直に喜んでいる。

もちろんこの結果で「オリンピックでメダルが取れる」「世界レベルに追いついた」という結論にはならない。そのことは私だけでなく田山自身が一番理解しているだろう。だが少なくとも世界の舞台での「勝ち方」「勝つために必要なこと」を田山自身が掴み取ったはずだ。その意味は大きい。

心配なのは、この結果により勘違いをした人間が周囲に集まってくること。「世界は遠い」と本人が理解しているのに、不必要に騒ぎ立て、祭り上げ、褒め称える。その結果、本人にも勘違いを生じさせ、慢心させてしまうこと。勝ったことは歴史的快挙ではあるが、まだスタートラインに立ったに過ぎない。オリンピックメダルは遠い彼方であることは理解しておかなければならない。本人の戦闘意欲を惑わすような称賛は止めるべきだ。

来年の本番までにどこまで修羅の道を進めるか、そこが成長の大きなポイントだ。ライバル不在となってしまった国内で戦うことよりも、厳しい世界の舞台で戦い続けることが田山にとって必要な次のステップだ。残り8ヵ月、どこまで世界の風に抗えるか、ワールドカップ連戦という戦いの中で生き残ってゆけるか見守りたい。安易な道だけは選んでほしくない。

女子では井出樹里が2位、古谷あかねが7位と、こちらも素晴らしい結果だ。
戦うたびにレベルアップしてゆく古谷は「SWIMで絶対に遅れることがない」という強みを持つ。この冬に、どこまでRUN強化ができるか。練習量と怪我とのバランスがキーポイントとなる。
一方、田山とは違った意味で世界の頂点との差を、身をもって感じることができた井出樹里。先頭を突っ走りながら、最後の最後で2位に甘んじてしまった彼女も、「勝つために必要なこと」を感じ取ったことだろう。
日本女子選手たちの躍進には目を見張るものがある。それでも「本当の頂点」があるのは、はるか彼方であることは認識しておいてほしい。だからこそ断ゆまぬ努力が必要なのだ。

オリンピック前になると、どの国でもレベルアップが顕著になる。少なくとも現時点で、田山と女子選手は世界の流れに乗り遅れていないことが証明された。
ロングもショートも関係なく、全てのトライアスリートには、この仲間達を応援してほしい。

(写真1)
世界選手権やオリンピックでのスタート前の緊張感をどうやってマネージメントするか?
その研究のために取り組む格闘技。「勝つぞ!」と試合に臨む場合と「勝てたら良いな・・・」と試合に臨むのでは歴然とした違いがある。
星野ジャパンのプロ野球選手ですら「負けられない戦い」というプレッシャーのマネージメントには苦労している。
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(写真2)
後輩である自転車ロード選手(中川康二郎)が引退 → 結婚した。自転車界のみならず、トライアスロン、ビーチバレーと他種目選手も勢ぞろい。五輪経験者が4名、元日本王者、プロ経験者も参加した賑やかな式となった。
悔い無き終わりの時を迎えるためにも今一瞬を精一杯戦ってほしい。
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