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2012 IRONMAN HAWAII 世界選手権

 

Race Report

2012 IRONMAN HAWAII 世界選手権

ハワイ①
開催日 2012.9.29
レポート・写真 レポート:ヤマムラユウキ  写真:吉本拓也、SightZ

 


2012年10月13日土曜日に、ハワイ島カイルア・コナにて、2012年Ironman Hawaii 世界選手権が、いままで以上の大規模で開催された。世界各国で開催されているIronmanブランドのレースにて、スロットを勝ち取り、このプレミアムレースであるハワイの世界選手権への切符を得たトップ中のベストアスリート達がこのIronman発祥の地へと集った。プロトライアスリートに関しては、ランキング制が導入されてから、ハードなレーススケジュールの中、数々のIronmanやIronman 70.3レースへ参戦し、ポイントを稼ぎ、そのランキングの中から、プロ男子50人(+3人:元優勝者)、プロ女子30人(+1:元優勝者)が選ばれた。 気候、風、熱さ、駆け引き等、すべてのハードな条件が揃った、このハワイ世界選手権の地で、120、000ドルの賞金と今年導入されたチャンピオンジャージの獲得を目指し、Ironman世界王者としての称号を勝ち取るために、接戦が繰り広げられた。 

ハワイ②

レース当日の朝5時には、レース会場の 周りは人だかりで、緊張感の漂う中、プロやエイジのアスリート達が、ボディマーキングへと向かい、続々とトランジションへ入り準備を進め始めた。それぞれのアスリート達が、スタートの時間まで、ストレッチを したり、メールをチェックしたり、家族や友達と時を過ごし、リラックスを心がけようとしながらも、緊張と共にスタートのあるビーチへ足を運び始めた。

 

プロ男子

ハワイ③

6 時30分のスイムスタートを前に、コナのカイルアベイのトランジションでの準備を終えた、選手達が続々とスタートのビーチやすぐ側のホテルのプールサイド で静かに、ストレッチやアップをしながら、気持ちや感情を整理し始めていた。どの選手もしっかりとした顔立ちで、緊張感も漂いながらも、自信に溢れた表情が垣間見れた。

ハワイ④

200メート程離れた、スタートラインへ泳ぎ、50人のプロトライアスリート達が、スタートの合図を立ち泳ぎしながら、横一列で待つ。緊張感の中、6時30分になると、スタートの合図である大砲が打たれ、プロ男子のレースがスタートした。

スイムスタート後、200メートル程までは、大きなパックが連なり始め、予想通り、スイマー上がりのアメリカ代表Andy Pottsが、先頭を引き始めた。同じくスイムに自信のあるエストニア代表Marco Albertも、離れないように後ろを着いて行った。去年、スイムを2位でトップ通過した、オーストラリア代表Pete Jacobsは、パックの先頭で、いつも通りペースを大事にし、その後ろにCraig Alexander、Michael Raelert、Paul Mathews、Luke Bell、Luke McKenzie、David Dellow、Timothy O’Donnell等を含む第1集団を率いて展開が始まった。

スイムパートの折り返しに差し掛かった頃、先頭を行くPottsが、曲がるブイを間違えコースを外れてタイムをロスするアクシデントもあり、後ろのパックとの差を縮めてしまう。例年より多少波が高い中、トランジションの沿岸に近づいてきたのは、やはりPottsで、すぐ後ろにAlbertが着いていた。かなりリズミカルな泳ぎでPottsが、スイムラップトップの50分30秒でスイムフィニッシュし、そのすぐ15秒後に、Albertが2位通過し、その間Pottsは、バイクラックまでの道のりを軽快に走り、得意の高速トランジションでバイクスタートへと早々と出発した。

ハワイ⑤

ハワイ⑥

ハワイ⑦

ハワイ⑧

その後、第一集団のBoecherer、Jacobs、Mathews、McKenzie、Jurkiewicz、Dellow、Alexander、Henning、Van Lierde、O’Donnell、MRaelertの順で大きなパックが1分遅れでトランジションへ向かった。少し遅れて、Marino Vanhoenacker、Dirk Bockel、Chris McCormack、Timo Brachtが、スイムフィニッシュで、トランジションへ。バイクスタートで飛び乗った際、McCormackが Vanhoenackerに追突するというハプニングもあり、その影響でVanhoenackerにメカトラブルもあった様だ。その4分後、出遅れたドイツ勢Andreas RaelertやSebastian Kienleが続き、先頭集団までの大幅なギャップをバイクで埋める必要になってきた。

順調にバイクをスタートしたPottsだったが、最初の10キロの坂を折り返した下り坂で、後ろから猛スピードで来るMcKenzieとAlexanderにすぐに抜かされ、続々と2人と同じ集団でスイムを上がってきた選手達に抜かされ始めた。バイクメインコースのクイーンKハイウェイに入った頃には、McKenzie、Alexander、Bennett、Gambles、Mathews、Jacobsなどのオーストラリア代 表勢で回し始めた。だが、その後ろからすぐにバイクが強いヨーロッパ勢のMRaelert、Henning、Guillaume、Van Lierde、Mckernanも様子を見ながら、大きなパックを構成したままレースが進み始めた。

そのままの大きなパックで、約70キロ地点に差し掛かると、Jacobsが先頭を引っ張る等の場面もありながら、McKenzie、Guillaumeと共にアグレッシブな駆け引きが続いた。この時点でスイムで遅れたVanhoenacker、Kienle、Bockelも追いつくことができた。すぐさま、Vanhoenackerが、折り返し手前で先頭を奪い、そのままKienleと2人で逃げる展開に持ち込もうと、後続との差も1分程開き、自身の戦略を実行し始めた様に見えた。バイクスタート時から、自身の不調を訴えていたMcCormackは、次々とトレーニングパートナーのRonnie SchildknechtやPaul Amey等に抜かされ始めてから、Hawiの折り返し地点を通過して、すぐにリタイアを決めた。

ハワイ⑨

ハワイ⑩

ハワイ⑪

ハワイ⑫バイクパートにて、この折り返し地点からが、勝負所だと知っているVanhoenackerやKienleの強豪バイカーの達は、猛スピードでそれぞれの明確な差をつけるため、必死にしかけ始めた。120キロ地点のKawaihaeの上り坂と強烈な風に差し掛かった時には、Vanhoenackerが、2分程の差をすでに開き始め、後方から追ってくるJacobs、McKenzie、Guillaumeを含む先頭集団が続いた。折り返しすぐにKienleは、パンクに悩まされつつスペアタイアに変えようと焦りながらも、メカニックからのスペアホイールに変えて復帰し、すぐにトップ集団に追いついた。バイクフィニッシュ手前の160キロ地点では、後ろから徐々に追ってきたJacobs、Bockel、Van Lierde、Al-Sultan、Kienleの集団が続き、この時点ですでにVanhoenackerは、8分もの差を作り逃げ切る体制に入っていた。

バイク後半の向かい風や徐々に熱くなる気温に対して、バイクで引き離そうと強烈なスピードで駆け走るVanhonenackerが、最速バイクタイムの4時間25分49秒で、最初にトランジションへ到着した。その8分後に、集団で、Jacobs、Bockel、 Van Lierde、Al-Sultan、Guillaume、Kienleの順で強豪選手達が、バイクを終え、トランジションへ向かい、かなり先を行くVanhoenackerを追いかける展開 が始まった。トップ集団の3分後に、McKenzie、Bracht、Dellow、ARaelert等の主要選手達がバイクフィニッシュし、トップ10の争いも激化していった。注目のAlexanderは、バイクで調子の良さを出せずに、トップと15分以上の差をつけ、19位で通過し、ランスタートした時には、2時間30分台のペースで追いかけるつもりでいた。

 

ハワイ13

どの選手も最初の10キロは、リズムを掴むため に、ペースを抑えつつも、先を行く選手達を見落とさずに、相手の様子を探る様に、走り始めた。この一番熱い時間にスタートするランでは、どの選手もエイド でのアイス、水、スポンジ等常に取り、体をクールダウンすることに専念していた。

毎年最速ランラップを出し、ランを得意としているJacobs が、すぐに2位へ上がり、8分先を行くVanhonaenackerとの差を縮めるチャンスを着々と実行に移していった。最初の10キロを終えた時点で、 その差は6分にもなり、Vanhoaenackerもこの熱さで、思った様なランペースを刻むことはできないでいた。先頭を追うのは、Jacobsだけで はなく、ARaelertもスイムでの遅れをバイクで埋め合わせ、ランでは着実なスピードで先頭集団を追いかけ、一人一人抜かし始めた。

ハワイ⑭

ハワイ⑮

ハワイ20

ちょうど25キロ地点のエナジーラボに差し掛かった所で、Vanhoenackerに異常が発生し、低血糖と脱水症状で、エイドステーションで歩き止まった。この時点で、レースへ復帰することができずに、バイクで8分ものの差をつけたVanhoenackerが、去年と同様にランでリタイアする結果に終わってしまった。

このリタイアで、2位で走り追いかけていたJacobsが、1位へと上がり順調なペースで、後方の選手からも差を徐々に開いて行ったことで、だんだん優勝に向 けての安全圏を作り始めていた。Jacobsは、後ろの選手が迫ってくるのを気にしつつも、エイドステーションでは、少しスピードを落とすも、しっかりと 補給と体温の冷却に専念していた。唯一、後ろから追いかけてくる選手は、20キロ地点から、3位と4位でデッドヒートを繰り広げていたARaelertとVan Lierdeで、時々並走しながらも、先頭を行くJacobsを追いかけていた。Ironman 70.3世界王者のKienleも初出場ながら、熱さに強いランを見せ、前を行く最初の5キロで、Al-Sultanを抜かし、2位をキープしながら、無理をせず自分のペースを大事にして強い走りを見せていた。

ハワイ21

ハワイ22

調子の良いARaelertは、エナジーラボの折り返し後に、Van Lierdeを一度置き去りにし、前を行くKienleを抜かし、2位へと浮上した。その後、コンスタントなペースで走り込むARaelertの後ろから、再度Van Lierdeが、差を徐々に詰め始め、残り3キロ程で並走する展開に戻ってしまうことになる。ARaelertにとっては、2010年にMcCormackとラスト数キロで並走し、優勝を逃してしまった様な事態に再度陥ることになる。ARaelertは、その苦い思いを追い払う様に、ラスト2キロのPalaniロードの下り坂に差し掛かった所で、数メートル先を行ったVan Lierdeに、再度追いつき、死にものぐるいのラストパートをかけ、必死に引き離し走り始めた。後ろを常に気にしつつも、その苦しい顔と共にフィニッシュラインまでスピードを弱めず走り続けた。

しっかりとリードを取っていたJacobsは、そのままエナジーラボ通過後、残り15キロもコンスタントなペースで独走し、残りの2キロで、Palaniロードの下り坂へ差し掛かった瞬間、ガッツポーズをし、勝利を確信し始めた。過去の優勝者であるMark AllenやChris McCormackが、このPalaniの下り坂に最初に到達した選手は、もう優勝を手にしたのと同然で、残りの2キロはその勝利を味わうためのラストマイルだというジンクスを信じていたJacobsは、その嬉しい感情を抑えることができずに、笑顔と嬉しさ振りまき、観客とハイタッチをし、手を大きく伸ばしな がら、その勝利の瞬間を噛み締めていた。

そして、2012年Ironman Hawaii 世界王者に輝いたのは、3種目とも素晴らしいバランスで、攻めのレースを見せてくれた、総合タイム8時間18分37秒で、オーストラリア代表Pete Jacobsが、このハワイにて、長年の目標と夢だった優勝を初めて叶え、オーストラリア代表勢が6年連続の優勝を重ねた。

2位には、ドイツ代表のAndreas Raelertが、最後必死のスプリントランで、逃げ切りランラップ2時間47分23秒で追いかけ、総合タイム8時間23分40秒で、入賞を飾った。そして、ベルギー代表のFredrik Van Lierdeが、2位のAndreas Raelertを追いかけたものの、最後まで追いつけずに、8時間24分9秒で、3位に滑り込み、トップ3入りを始めて果たした。4位には、バイクでパンクに悩まされたものの、そのバイクの強さですべてをカバーした、ハワイ初出場で今年の70.3世界王者のドイツ代表Sebastian Kienleがフィニッシュした。5位に、2005年ハワイ世界王者のFaris Al-Sultanが、粘り強いバイクとランで、ベテラン選手としての強さと経験値を見せ、堂々とトップ5入りを果たした。

毎年トップ10入りを果たしているドイツ代表Timo Brachtが6位、スイムトップで上がり、今一番の調子の良さを見せたアメリカ代表Andy Pottsが7位、2度目のハワイ出場でトップ10入りを望んでいたこれから期待の選手であるアメリカ代表Timothy O’Donnellが8位、Team TBBからの唯一の選手であり、右肩上がりのパフォーマンスを見せ続けているオーストラリア代表David Dellowが9位、そしてバイクで追い上げを見せトップで上がってきたものの、ランで少々落ちてしまったルクセンブルグ代表Dirk Bockelがギリギリトップ10入りを果たした。

ハワイ24

 

リザルト

1.Pete Jacobs(オーストラリア) 00:51:28 04:35:15 02:48:05 08:18:37
2.Andreas Raelert(ドイツ) 00:55:17 04:36:34 02:47:23 08:23:40
3.Fredrik Van Lierde(ベルギー) 00:51:36 04:35:25 02:52:49 08:24:09
4.Sebastian Kienle(ドイツ) 00:55:21 04:33:23 02:54:24 08:27:08
5.Faris Al-Sultan(ドイツ) 00:51:39 04:35:53 02:56:49 08:28:33
6.Timo Bracht(ドイツ) 00:53:45 04:37:16 02:55:36 08:30:57
7.Andy Potts(アメリカ) 00:50:32 04:43:52 02:53:18 08:31:45
8.Timothy O’Donnell(アメリカ) 00:51:37 04:44:15 02:53:59 08:33:28
9.David Dellow(オーストラリア) 00:51:33 04:40:27 02:59:02 08:35:02
10.Dirk Bockel(ルクセンブルグ) 00:52:30 04:34:17 03:05:47 08:36:21

 

 

プロ女子

ハワイ25 今までプロ男子との同時スタートを取っていたが、スタート時の混乱やバイクでのドラフティング等の影響を避けるために、今年から新しくプロ女子のスイムスタートを、プロ男子スタートの5分後、6時35分スタートとして試行された。この変更がされることにより、もっとプロ女子間のレースを自由に行えるようにして、多くのプロアスリート達に共感を得た状況で新しい形でレースは開催された。

6時35分に時計が回ると、スタートの合図である大砲が打たれ、一気にプロ女子がスタートした。ここで注目されていたのは、アメリカ代表でスーパースイマーのAmanda Stevensが、先頭を引っ張る形で、後方から他のスイムが強い選手達のパックが形成され、前半戦は進んでいった。プロ男子と変わらない泳ぎを見せるStevensが、後半から徐々に1人旅を始め、十分な差を開き始めようと力強く泳ぎ始める。スイムが得意なMeredith Kessler、Gina Crawford、Leanda Cave、Mary Beth Ellis、Amy Marshがパックで一緒に泳ぎ始めた頃、第2パックには優勝候補のCaroline SteffenやRachael Joyce、Kelly Williamson、Rebekah Keatが続き、さらに大幅な差をつけMirinda Carfrae、Linsey Corbin、Natasha Badmann、Sonja Tajsich等は、遅れながらもそれぞれ1人旅をしながら自分のペースで泳いでいた。

ハワイ26ハワイ⑰予想通りStevensが、スイムラップ55分9秒で余裕のトップ通過をし、後方に1分差をつけ、Kessler、Crawford、Cave、Ellis、Marshの集団がスイムフィニッシュした。トップ通過から2分後に、第2パックのSteffenやJoyce、Williamson、Keatが57分代でフィニッシュした。トップスイマーから5分以上遅れて、2010年世界王者のCarfrae、Corbin、Tajsich、Badmannが、スイムラップ1時間以上かかり、トランジションへ到着した。

バイクスタート後、Stevensが後方とつけた1分程の差を詰められまいと、最初の10キロは、先頭を独走していたが、すぐ後ろからバイクの強いCave、Kessler、Ellisが、徐々に追いつき始め、Marshを含む6人の集団が構成され始めた。スイムで3分程遅れを取ってしまった、Steffenが、バイクの強さを前半から見せ始め、すぐさま先頭集団に追いつてから、Cave、Ellis、Steffenの3人で先頭を回して行く展開へ変わっていった。だが、Steffenが、ドラフティングペナルティーで、4分間ロスをしてしまったが、驚異的なスピードで、先頭の2人に追いつき、再度3人で先頭を過ごす展開になった。そして、Hawiを折り返した後、Caveもドラフティングペナルティーを取られてしまう結果になり、4分間ロスしてしまうことにもなる。

ハワイ⑱ハワイ⑲ このトップ集団の3人を追いかけるように、成長したバイクの強さを見せようと、Carfraeが追う中、その後ろからベテランのBadmannも驚異的なスピードで、差を徐々に詰め始めていた。そして、スイムでトップと15分以上遅れを取った、ドイツ代表Sonja Tajsichも、得意のバイクパートでトップ集団とのギャプを最小限にしようと走り始めていた。バイクの前半で、トップ集団を力強く走っていたKesstlerは、途中バイククラッシュをしてしまい、バイクコース上でリタイアはせずに、最後までバイクフィニッシュをし、ランをスタートする前にリタイアする結果に終わった。

まずバイクフィニッシュをトップで上がってきたのは、Ellisで、その後ろからすぐSteffenがトランジションへと到着し、4分間のペナルティーを貰ったもののSteffenが、バイクラップの5時間6分49秒を打ち出した。バイクフィニッシュに近づいた頃に、Ellisもドラフティングペナルティーを取られていることが判明し、トランジションに到着してから、ランをスタートする前に、ペナルティーテントで4分間過ごすことになった。その4分後に、遅れて3位通過でCaveがバイクフィニッシュをし、さらに4分後に、Carfrae、Badmann、Marshの集団が到着し、先頭を行くSteffenを追いかける形になった。一番驚いたのが、47歳のBadmannが、スイムで大幅に遅れたものの、5時間6分7秒の最速バイクラップを打ち出し、スイムフィニッシュ26位からバイクフィニッシュで6位まで順位を上げたことで、ベテランで5度世界王者が、さらにこのレースに火をつけ始めた。

ハワイ⑳最初に、勢い良くランを始めたのは、今年最も調子の良いSteffenが、先頭を走り始め、その後ろからCaveが追いかけ始めた。8分差をつけられた、スーパーランナーのCarfraeは、前半戦苦しんだものの、バイクの終盤で追い上げることが出来たことで、後は得意のランでこの大幅な差を縮められるかが、大きな問題になってきた。
ハワイ27Steffenが順調なペースで先頭を走る中、ランスタートからCaveとEllisがクイーンKハイウェイまでの15キロ程を並走し続け、この3人を追いかけるCarfraeが着実に差を5分まで縮めた。クイーンKハイウェイのランコース上で、まずCaveが、Ellisを置き去りにした2位で走り始めた途端、すぐさま後ろから、素晴らしいランスピードでCarfraeが追いつき、丁度エナジーラボ(25キロ)の手前で抜かし2位へ浮上するかと思われた。だが、追いつかれたことを気づいたCaveは、スペシャルドリンクを受け取り補給した後すぐに、エナジーラボの下り坂でペースを上げ、逆にCarfraeとの差を開くことを始めた。

このままCaveが、タイミング良くペースを上げたことで、先頭を行くSteffenもペースが落ち始めたこともあり、徐々に差を詰め始めて行った。残り5キロを残す所で、CaveがSteffenに追いつき、数キロ程並走し、2人はトップ争いを繰り広げ始めた。バイクで脚を使いすぎてしまったのか、Steffenは、Caveのペースについて行くことができずに、2位へと落ちていった。コンスタントなペースをキープし、Caveがトップを走り始めた頃、残り2キロのPalaniロードの下り坂に差し掛かり、後ろを確認しつつも、勝利を確証するまでは、ペースを落とさずに、しっかりフィニッシュまで走り抜けた。

2012年Ironman Hawaii 世界選手権で優勝を飾ったのは、今年2012年Ironman 70.3 世界王者にも輝き、プロ女子では、初のダブル世界タイトル獲得を果たし、今回初のIronman世界王者に輝いた、イギリス代表Leanda Caveが、この熱さとハードなコンディションの中、3種目バランスの良い強さを見せ、堂々とアイアンマンハワイの女王へと輝いた。

ハワイ28 2位には、悔しくも最後の5キロでトップを奪われてしまった、スイス代表Caroline Steffenがフィニッシュし、3位には、一度は驚異的なランでCaveに追いついたオーストラリア代表Mirinda Carfraeが、素晴らしいパフォーマンスを見せ入賞した。スイムで大幅に遅れてしまったものの、力強いバイクと最速ランラップの2時間59分26秒のタイムを出した、愛娘を持つドイツ代表Sonja Tajsichがランナーアップで4位に上がり、初のトップ5入りを果たした。途中までCaveと並走し、今年のシーズン通して急成長した実力を見せ、常にトップ集団で戦っていた、Mary Beth Ellisが5位でフィニッシュした。

ベテランで5度の世界王者に輝いたことのあるスイス代表Natasha Badmannが、47歳という年齢とは思えない素晴らしいパフォーマンスを見せ6位に、ニュージーランド代表Gina Crawfordが、もう1人のママさんプロトライアスリートとしての強さを見せ、コンスタントなペースで7位に入賞した。8位から10位には、アメリカ代表勢が、Linsey Corbin、Caitlin Snow、Amy Marshの順で続々とフィニッシュをしトップ10入りを果たした。

 

リザルト

1.Leanda Cave(イギリス) 00:56:03 05:12:06 03:03:13 09:15:54
2.Caroline Steffen(スイス) 00:57:37 05:06:49 03:08:08 09:16:58
3.Mirinda Carfrae(オーストラリア) 01:00:06 05:12:18 03:05:04 09:21:41
4.Sonja Tajsich(ドイツ) 01:10:36 05:07:57 02:59:26 09:22:45
5.Mary Beth Ellis(アメリカ) 00:56:06 05:08:06 03:10:30 09:22:57
6.Natasha Badmann(スイス) 01:06:21 05:06:07 03:09:18 09:26:25
7.Gina Crawford(ニュージーランド) 00:55:59 05:21:30 03:06:16 09:28:54
8.Linsey Corbin(アメリカ) 01:02:53 05:16:55 03:07:55 09:32:18
9.Caitlin Snow(アメリカ) 00:57:43 05:30:47 03:03:06 09:36:18
10.Amy Marsh(アメリカ) 00:56:08 05:16:36 03:20:27 09:38:15

 

 

 

YUKI_1 ヤマムラユウキ <TriWorldJapan>
現在トライアスロンショップ学を習得するためにメイストームに勤務。長年海外でのトライアスロン大会出場経験や情報網作りを元に、2012年より世界進出を目指す人のために日本語版トライアスロン情報ウェブサイトを開設。http://triworldjapan.com

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