今年で3回目となる「アイアンマン70.3セントレア常滑ジャパン」は、スイム1.9km、バイク90.1km、ラン21.1kmで争われる日本で唯一の「IRONMAN 70.3シリーズ」のレースだ。参加人数はリレーも合わせると約1700名と大幅に増え、日本最大級の大会に育った。今年の目玉は、何と言ってもラスベガスで行われる「IRONMAN70.3世界選手権」(25)のスロットに加え、ハワイの「IRONMAN世界選手権へのスロット」(30)も争われることだろう。これにより、国内の強豪エイジグルーパーや海外の強豪もハワイのスロットを目指し、ここセントレアに集結した。
もうひとつの大きな話題は、2度の世界チャンピオンの実績を持つクリス・マコーマック選手の参戦だ。前日の競技説明会から気軽に記念撮影に応じ、サイン会は長蛇の列になったが、レース期間中は終始リラックスした表情で日本でのアイアンマンを楽しんでいるように見えた。自分も含め、多くのアイアンマンたちは彼の気さくな素顔に魅了されたことだろう。
受付会場は、今年も中部国際空港「セントレア」。レースに先立ち、金曜日からメインステージ前でアイアンマンストアを中心とした「トライアスロンEXPO」がにぎやかに開催され、参加者のほか、空港利用者も驚きを見せながら、ちょっとしたイベント気分を楽しんでいた。
スイムスタートは、今年から変更された多屋海岸からのフローティングスタート。南下して、メイン会場のあるりんくうビーチへ上陸するワンウェイのコースだ。当日は波もなく絶好のコンディション、しかも追い潮だったようで予想以上に上陸するのが速く、トップはなんと20分06秒の驚異的なタイムで上がってきた。
バイクコースは、常滑市街地をぐるっと囲むかたちで設定されている。コース前半は、海岸線を南下しながら常滑の海岸線と古い町並みの中を走り抜け、中盤から後半は内陸側に入って2周回。のんびりと美しい田園風景が広がるが、細かいアップダウンとコーナーが連続し、選手達を苦しめていた。コースには狭かったり、路面の荒れているところも一部あったようだ。
バイクフィニッシュは常滑市体育館だ。ここから21kmのランが始まる。エイジ選手がランに移る頃には日差しも出てきて、暑さとの戦いになった。海運により繁栄した面影が残る大野町の市街地を抜けると、伊勢湾を望む海岸線に出る。ここからは、セントレア空港を海の向こうに見ながら海岸線を走ることになる。日陰はないが、風は思いのほか爽やかだった。暑いながらも走りやすかったのではないかと思う。
ゴールの横を通り過ぎたあとの残り約6kmは、折り返しの連続だ。ライバルとの差を測ることができるが、その反面、精神的に一番きついところ。ゴール会場では、アイアンマン名物MCのウィット・レイモンドさんの名調子が最後の踏ん張りをみせる選手達を励まし、観客と一緒に盛り上げていた。
この大会の特徴として感じるのは、地元の観客や応援がとても多いことだ。 早朝、スイムスタート地点の堤防には多くの地元のおばちゃんたちの姿があったし、バイクやランの沿道にもたくさんの人が出て熱心な声援を送り、選手達も笑顔で応えていた。ボランティアは総数1400人だという。そのすべてが組織動員ではなく、公募のみで集まったというからアイアンマンに対する地元の理解と応援がうかがえる。開催地で愛されるレースほど、選手を勇気づけるものはない。
優勝争いは、予想通りクリス・マコーマックとオーストラリアの新鋭ティム・バーケルとなった。バイクから2人で抜け出し、後続を引き離す展開に。バイクフィニッシュもほぼ同時。ラン勝負となるもお互い譲らず、勝負はゴール前のスプリントでマコーマックがバーケルをかわし、2秒差で優勝した。
女子は、田中敬子選手(チームゴーヤー)がアイアンマン70.3初挑戦で初優勝を飾った。
世界トップレベルの選手も参戦した今大会。やはり「アイアンマン」は華やかだった。 |