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第118回女子指導者の重要性

スポーツの世界においても長年のテーマとされている問題は多い。
近年、男性比率が高いスポーツ指導者の世界においても改革が着々と進められるようになった。
JOC(日本オリンピック委員会)やJSC(日本スポーツ振興センター)なども女性アスリート向け、女性アスリート指導者向けの講習会が頻繁に行われるようになってきた。

男性指導者がなかなか立ち入ることのできない女性特有の現象に対して真剣に向き合うチャンスがきたともいえる。
身体のことは特にジュニア女子選手にとっても重要な事項であるし、またそれを指導する指導者にとっても知っておかなければならない必須のテーマなのだ。

「体重は軽い方が良い」
「生理は面倒だから無い方が良い」
「生理などなくたって問題ない」
「生理があるのは練習していない証拠だ」
「痩せろ。痩せなければダメだ。痩せていない選手は通用しない。」
こんな会話を聞いたことがある選手、指導者は少なくないだろう。

タイムだけを追求し、競技成績だけを追求し、そしてそれなりの結果を得る。
選手も満足、指導者も満足。
肉親、関係者も満足、、、かも知れない。
競技者だから、これで当たり前と言われれば、その通り。
身体に悪くても、結果を出すためだけに戦っているのだから仕方がない、とも言える。

この考えは正しいか、間違っているか。
それぞれに考えてみてほしい。
その瞬間に栄光を手にできるために犠牲はつきもの。
だが長い将来を考えた場合、人間として、女性として、これで良いのか。
競技団体の考え方、指導者の考え方、選手の考え方、それぞれ違うだろう。

私自身も選手時代は「死んでも構わないので、その瞬間の栄光がほしい」と強く思っていた。
そのためなら何でもするし、何を失っても構わないと考えていた。
反則やドーピングなどの自分に誇りを持てない行為は論外であるが。

だが日本トライアスロン連合の強化チームとしては「人間性」「人間力」を謳っている。
すなわち選手時代も、引退後も人間として女性として正しく生きてゆけるような強化を推し進めることを選択した。

とはいえ男性にはなかなか理解し辛い部分があることは言うまでもない。
そのために重要なことは優秀な女性指導者をいかに育成していくかということになる。
男性指導者が勉強することは当たり前。
それでも女子アスリートが男子指導者に相談するのはハードルが高いテーマがある。
ジュニア女子アスリートにとっては尚更だ。
現在、ナショナルチームでは山倉紀子コーチ、U23カテゴリーにおいては浅沼美鈴コーチが辣腕を振るってくれている。

一般選手向けの指導者であれば数多く存在するが、ナショナルレベルとなるとなかなか難しい。
「死にもの狂いで戦ったことがある」
「公益のために私利私欲を捨てられる」
「人間性が高い、または高めようと努力をしている」
トップ指導者に必要とされる素養だ。

優秀な選手の育成と併せて優秀な指導者の育成が急務となっている。
リオデジャネイロ五輪まで1年6カ月。
東京五輪まで5年6か月。
果たして間に合うのか。
我々の回答は「間に合わせる」もしくは「間に合わせてみせる」しかない。

【写真1】DSC_0003 TRI-X
2014年第3回U23合宿でレクチャーをする浅沼美鈴コーチ。
競泳出身の経験を生かしたトライアスロンスイムを練習に取り入れる。

【写真1】DSC_0003 TRI-X
強化記録会を戦う女子選手たち。
2014年のレースで結果を残した選手だけが参加できる。
さらにここで基準タイムを突破した選手のみが「世界への挑戦権」を手にすることができるのだ。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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