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第117回求む、戦う選手

2015年がスタート。
リオデジャネイロまで残された時間は多くはない。
この年末にはU23選手の合宿が開催。
年が明ければナショナルチーム合宿がスタートする。
選ばれた選手だけで開催されるナショナルチーム合宿。
もっと多くの選手を参加させたいところだが、日本の選手層は薄い。

現在、世界トライアスロン・シリーズに出場できる選手は非常に少ない。
2015年は世界で10戦。
横浜大会のように国内開催であったとしても世界ランキングが低いために出場できる日本選手の数は限られる。
2015年のワールドカップは全8戦。
こちらに出場できる選手も多くはない。

現在のトライアスロンはテニスのランキングと似ている。
とにかくレースに数多く出場しなければならない。
ポイントの大きな世界シリーズやワールドカップに出場するためには、世界ランキングを上げなければならない。
出場できない選手は、まずはコンチネンタルカップと呼ばれる大会でポイントを稼がなければならない。

2015年、国内では蒲郡、大阪、村上がコンチネンタルカップとなる予定だ。
まずはここで3位以内に入ることは必須条件だ。
ここで表彰台に登れない選手が世界シリーズやワールドカップに出場してもポイントを獲得することはほとんど不可能だ。

選手にはこれを理解してほしい。
この作業をなくして「世界シリーズに出場したい」「ワールドカップに出場したい」と言っても不可能なのだ。
JTU強化チームで対応できる話ではない。
世界の流れがこのようになっているのだ。
世界ランキングが低い選手には、出場権など与えてもらえない。

海外のレースを見てみよう。
日本女子においては2014年世界シリーズで入賞、ワールドカップで優勝という実績を残した。
だが日本男子においては田山、細田以外はポイントを獲得することすら難しい状況。
従って、男子選手は相当な覚悟を持たなければオリンピックなど夢でしかない。
危機感を持って取り組んでゆく必要があるのだ。

もちろん強化スタッフの意識も変えてゆく必要がある。
コーチにも覚悟が必要だ。
過去に選手であろうが、コーチ専業であろうが、ビジネスマン出身であろうが、経歴は問わない。
だが人生を賭けた真剣勝負をしたことのない者にトップ選手の指導などできはしない。

我々の目標はオリンピックに出場させることではない。
2016年リオデジャネイロを通じ、2020年の東京オリンピックで、女子はメダル獲得を目標とし、男子は入賞を目標としている(ミニマムの目標)。
この目標を達成するためには選手自身の意識と指導するスタッフの意識の両方を劇的に変えなければならない。

選手には2種類の選手しか存在しない、と以前のコラムでも伝えた。
「頂点を目指す選手と、そうでない選手。」
その他大勢の選手となるために、選手は自分の人生を賭けてトライアスロンに取り組んでいないはずだ。
真剣になれ。
必死になれ。
死にもの狂いで戦ってみろ。
覚悟を決めた選手にのみチャンスは訪れる。

【写真1】DSCF0710 TRI-X日本選手権バイクパートで逃げる、田山、細田、谷口。
後方では10名近い集団が追いかけるも差は開くばかり。
日本選手のバイクレベルは無残なほど低い(男女とも)。
この事実を早く認めないと日本選手と海外選手とのレベル差は開くばかり。

【写真2】DSC_0188 TRI-X
リオデジャネイロ・オリンピックに向け、強化記録会を12月に開催。
JTUとしては、世界で戦うための最低限のタイムを設定し、クリアした選手のみに世界シリーズやワールドカップへの出場を認めている。
しかしJTUが認めても、ITU(国際連合)が許可するかは判らない。
希望のレースに出場するためには世界ランクを上げるポイントが必要なのだ。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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