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第106回コラム「2013年日本選手権」

2020年オリンピックの東京開催が決定した。
各方面から「おめでとう」の言葉をもらうようになった。
興味を持ってくれることは嬉しい。
私自身も1964年の東京オリンピックは記憶に無いので、2020年のオリンピックが日本で開催されることを嬉しく思う。
同時にその一員として深く係れることを誇りに感じている。

だが同時にこれは7年後までにメダル候補を育成する、という義務が生じたことを意味する。
地元開催である以上、「メダルは取れません」では許されない風潮になってゆくことが容易に想像できる。
トライアスロンに限らず各競技団体には大きなプレッシャーが掛かったことになる。

とはいえ東京オリンピックばかり意識している訳にはいかない。
3年後にはリオデジャネイロ・オリンピックが迫ってきている。
この舞台でしっかりとした「足場」を組み立てておく必要がある。
ここで足場をしっかり築いておかなければ「メダル獲得」など夢で終わってしまう。
そしてここで言う「足場」とは単に「経験すること」を指してはいない。
北京オリンピックでの5位に順ずる結果を出すことを意味する。

東京オリンピックの開催決定後、初めての日本選手権。
ロンドンオリンピック出場組と新鋭選手の激突が期待された。
テレビ的には「世代交代」をいうテーマを持つレースであった。

結果は周知の通り。
女子ではロンドン代表の上田藍が圧勝。
また一歩、課題のSWIMが前進したようだ。
一方、若手選手は、佐藤優香が勝敗そっちのけでSWIM、そしてBIKE序盤を突っ走る。「勝つため」のレースをしてほしい気持ちもあったが、「世界への挑戦」というテーマを考えれば攻撃的なレースをしたことは高く評価したい。
また同世代の高橋侑子はひとつひとつの種目に確実性を持たせ最後まで上田藍に抵抗を見せた。2年連続の準優勝は、彼女の確実なレベルアップを証明している。

ただレース全般を見てみると、BIKEで上田と同一集団になった後に、選手の動きはぴたりと止まった。
勝つことを諦め順位狙いに徹したのか、それとも上田にRUNで勝つ自信があったのか。
勝つためにBIKEパートで勝負を賭けるか、RUNで真っ向から勝負するか。
そういった明確な意思を見せた選手は少なかった。
まだまだ課題は多い。

一方、男子は田山劇場に終始した。
テレビカメラの独占状態といっても良いだろう。
最後まで抵抗したのは同じくロンドン代表・細田雄一。
若手としては石塚祥吾が5位、ジュニア日本代表の谷口白羽が6位に入る健闘を見せた。谷口は昨年、BIKEフィニッシュまでは田山、細田と一緒のグループだったが、RUNに移るころには精根尽き果て全くRUNが走れなかった。
昨年の経験をしっかり生かして今年は予想以上にRUNで粘った。
谷口の粘りと石塚の戦いは少しだけ評価したい。
しかし世界のタイムと比較すれば石塚、谷口のタイムは決して褒められた内容ではない。
男子は選手層が薄い上、世界との差が大きい現実を改めて突きつけられる。

田山、細田がまだしばらくは日本をリードしてゆくことになりそうだ。
U23世代、椿、古谷、石塚がこの2名を打ち破って世界に飛び出してゆくか。
ジュニア世代、谷口、前田、杉原、生田目の先輩を追い越して名乗りをあげてゆくか。
同世代ライバルと切磋琢磨していくことが世界に挑戦してゆくためには必要だ。

「目標は?」と聞かれて「田山さんのような選手になりたいです」という回答をする選手が居る。
それで良いのだろうか。ちょっとガッカリする。
確かに田山は強いし、素晴らしい戦いもする。
しかし田山を追い越して、初めて世界と戦えるレベルであることを忘れてはいけない。
そして日本選手権8勝という歴史に残る記録を出した田山寛豪がピークの強さを維持しているうちに倒さなければ意味もない。
我々が必要なのは田山を打ち破る選手だ。


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日本選手権の記者発表。
古谷、佐藤、高橋と「いつもと違うメンバー」が含まれたことは喜ばしい。
記者発表に呼ばれることは名誉なことだ。
しかし結果が伴わないと誰よりも辛い想いをすることになる
こういった取材に当然の如く対応できる能力も選手には求められる。

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日本選手権6位に入賞したジュニア日本代表の谷口白羽。
2013年ジュニア世界選手権(ロンドン)においてもBIKE終了時点までは安定したレースを見せた。
今後どこまでRUNをレベルアップさせることができるか。期待したい。

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