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第104回コラム「トップ強化を遅らせるマイナス思考」

優れた指導者とは何だろう。

優秀な選手を育成する指導者。
選手を成長させる指導者。
選手をやる気にさせる指導者。
人格、人間性の優れた指導者。
勤勉で高い向上心を持つ指導者。
競技経験、指導経験の豊かな指導者。
高い目標設定を持つ指導者。
アスリートファーストを信念に持つ指導者。

どれも正解である。
この全てを持ち合わせていればベストであるが、人間である以上、完璧な指導者となることは難しい。
だが指導者である以上に、完璧をめざし努力し精進してゆくということは大切だ。
「学ぶことを辞めたとき指導を辞めなければならない」
これはJOCナショナルコーチアカデミーで最初に教えられたことだ。

現在は、JOCナショナルコーチアカデミーを卒業した指導者が中核となってJTUとしての強化を進めている。
なぜこれらの指導者が中核を担っているのだろうか。
本人達が優秀であることも理由であるが、競技経験も豊かであり、勤勉であり、そして何より優秀な選手を育成してきたからでもある。
だからナショナルチーム監督の役職を担ったり、実務をつかさどるマネージャーを担ったり、専門委員会の委員長やリーダーとなってトライアスロンの強化を進めている。
そのメンバーは強化以外の面においてもトライアスロン普及のために広報、事務、国際的な協力、レース運営、教育などに積極的に取り組んできている。
古くからトライアスロンに取り組んでいるから、その場所に存在しているのではない、ということを理解しておいてほしい。

こういった現実の中で、選手や関係者の中から不思議な声が聞こえてくることだ。
「なぜ彼らがいつまでも強化の中心に居座るのだ」
「自分の所属選手ばかりを優遇しているのではないか」
「うちのチームの選手をおざなりにしている」

優秀な指導者だからこそ強化の中心に居るのではないだろうか?
優秀な選手を育成したからこそ、優秀な指導者と判断されているのではないのか?
指導した選手が強いから、その所属選手が代表に選ばれるのではないのか?

意味のない批判をし、根拠のない不平不満を吐き、他人を貶め、自分自身にとって有利な状況を作り出そうとする行動こそが、ナショナルチーム・スタッフとして相応しくないことに気づかないのだろうか。

「嫉妬」「ねたみ」「ひがみ」。
これはトライアスロン界だけに限った話ではない。
オリンピック・メダリストを育成した指導者であっても攻撃の対象とされる現実がある。
自身の「実力不足」という現実から目を背け、自分自身を正当化するために、他者に責任を擦り付けているとしか感じられない。
昔のコラムで「言い訳クン」の話をしたが、最近は「責任転嫁クン」「勘違いクン」も増えてきたようだ。
いやらしい個人の感情が選手の強化を遅らせる。

強い選手を倒せるような、強い選手を作り出す。
選手には「ライバル選手の存在が、自分をもっとも成長させる」と教えている。
マイナス思考では、いつになっても強い選手にはなれないからだ。
選手にも関係者にも「前向きな心」「健全な心」をもって戦っていってほしい。
それがトライアスロンというスポーツのレベルアップにつながってゆく。

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【写真1】

エリート指導を得意とするコーチ、ジュニア指導を得意とするコーチ、初心者指導に優れたコーチ、エイジグループ指導に優れたコーチ。
特定のカテゴリーにおいてスバ抜けた能力をもつコーチはたくさん存在する。
U19合宿で測定を実施する瀬尾コーチ。

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【写真2】

JOCナショナルコーチアカデミー同期生たち。
定期的な情報交換で各競技のレベルアップを目指す。
このときは特にトライアスロンに協力してくれているコーチたちが集まった

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)
1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝

1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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