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第121回コラム 「速さと強さを」

日本はアジアで考えた場合、最強の国と言える。
もちろんライバル国と競り合い、勝ったり負けたりもする。
楽な戦いをしている訳ではないが、選手もスタッフも関係者も「アジアでは勝って当たり前」と感じている。
視点を変えればアジアで最強でなければ世界では戦えないという意識の表れでもある。
これ自体は決して悪いことではない。
だが自信が過信とならないような注意は必要だ。

一部アジアの国からは「日本ばかりが勝って面白くない」ということで参加者数を絞ろうとするなど、アジアのレベルアップ、普及にマイナスとなるような提案が出ることもあったがASTC副会長であったJTU中山常務理事などの尽力もあり、正常に稼働している。

しかし、これは過去の話となりつつある。
香港はパトリック・ケリー、ニール・ハービーという世界屈指の名コーチを招聘し、ここ数年強化を行ってきた。
韓国もバラバラだった強化体制を徐々に整え一体感のある強化を実施するようになってきた。
今回のアジア選手権の結果はそれを感じさせるのに十分な結果となった。

6月12日、台湾で開催されたアジア選手権においてエリート男女とU23女子においては表彰台を独占する日本の完全勝利。
オリンピック前年の苛烈な選手同士の戦いの中、そして猛暑という厳しい環境下において選手たちは素晴らしいパフォーマンスを見せた。
だがU23男子は3位に渡部晃太朗が入ったものの1位 カザフスタン、2位 韓国。
ジュニア女子においては2位に久保埜南が入ったものの1位、3位は韓国。
ジュニア男子に至っては1位、2位、4位、6位が香港、3位がカザフスタンと日本選手の最高順位が5位に終わる結果となった。

この結果を踏まえてどう進んでゆくか。
今回の敗北の原因を考えた場合、恵まれすぎた日本の環境にあるといえる。
レースは気温35度近く、水温も30度を超え、湿度も高い。
確かに環境としては厳しい。
それは認めよう。
だがエリートは生き残った。
ジュニアは生き残れなかった。

ほとんどの選手は健康面、体調面を優先して、エアコンの効いた快適な部屋で過ごすことを常とし、就寝するに当たっても快適さを求めることで回復を早め、トレーニングを効果的に行ってきた。
世界のスピードに対抗するための方策として間違ってはいない。
「速さ」は身に付けてきた。
だが同時に「強さ」を失わせてしまった。
環境に耐えられる強さ、逆境に負けない強さ。

レースでは日常生活での過ごし方がそのまま表れる。
速さと強さを両立ができていないことを露呈したアジア選手権。
ここから再スタート。
まずは普段の過ごし方、考え方を変えてゆくことが求められる。

DSCF1008 Tri-X【写真1】
ジュニア・アジア選手権男子のスタート。
SWIM、そしてBIKE序盤は有利にレースを展開するがRUNで失速。
環境条件は全選手同じであることを忘れてはならない。
IMG_0872 Tri-X【写真2】
U23,ジュニアの混合リレーチーム。
日本エリートチーム、韓国チームに続き第3位。
左から久保埜南、山本康貴、佐藤志帆、渡部晃太郎。
各カテゴリートップの選手が代表となり辛抱強く戦った。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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