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第132回コラム 「驚異の進化。リオデジャネイロ・オリンピック」

8月、リオデジャネイロ・オリンピック。
9月、世界トライアスロンシリーズ・グランドファイナル。
2016年最大の国際競技大会が終了した。

グランドファイナルでは上田藍が5位に入賞し、WTSランキング3位という驚異的な結果を残した。
ジュニア女子では久保埜南が8位。
U23/ジュニア男女混合リレーでも8位。
一定の結果につなげることができた。
これだけの結果を出しながら、なぜオリンピックでは結果につなげられなかったのか。

2016年8月18日、トライアスロン男子決勝。
スペインのJ.ゴメスが欠場したことは少なからずレース内容に影響を与えた。
ランの強いスペイン勢を潰すためにスイムで先行するブラウンリー兄弟はバイク序盤に徹底的にスピードを上げた。
20%近い登坂200mが含まれる5kmの周回を8周回。
その坂を必死の形相で上るブラウンリー兄弟。
このスピードに追従できる日本男子選手は存在するだろうか。
特に1周目、2周目は自転車ロードレースそのものを見ているような状況だった。
世界のトップクラスが集まるオリンピックという舞台でバイク1周目に20人以上いた第1グループは2周目には10人に絞られた。
そこで生き残った10名のみがメダル争いに加わる権利を得ることができた。
第2グループからR.マレーが驚異のランニングを見せたが4位に入ることが精いっぱいだった。

8月20日、トライアスロン女子決勝。
スイムを第1グループでフィニッシュするも、バイクのスピードについてゆけず多くの選手が脱落してゆく。
バイク終了時に生き残った選手は18名。
この第1グループに残った選手のみが8位までの入賞を争う権利を得たのだ。
第2グループからH.ジェンキンスが追い上げを見せるが前を走る18名の選手に追いつくことはなかった。

前回の2012年ロンドン・オリンピックにおいては驚異的なランニングのレベルアップを体感させられた。
スイムとバイクを終了したのちの10kmを男子では29分台が4名、30分台が11名。
女子においても33分台が5名、34分台が7名。

今回のリオデジャネイロにおいては暑さの影響もありランニングのタイムは男子で30分台が2名、31分台が5名、女子は34分台が4名という結果になっている。

今回のリオデジャネイロにおいてランニングのレベルが落ちたのか。
答えは「否」。
確かにリオデジャネイロの暑さもタイムが落ちた要因の一つだろう。
だが本当の理由はバイクのレベルアップである。
バイクで疲労しきってしまうほどの驚異的なスピードが、ランニングのタイムを落としたと言える。
バイクのスピード、特にスピードの変化に対応できない選手は入賞することはできない。
バイクのレベルアップがリオデジャネイロでの最大の進化といえる。

加えてオリンピックという特殊な環境。
ここで価値があるのは3位までのメダル、そして8位までの入賞。
勝つためにリオデジャネイロに来た選手にとっては9位以降が何も意味をもたないこと。
ITUポイントを稼ぐ必要もないこと。
9位に入れないのであれば、あとは完走という勲章しかないこと。
そのため選手全員がイチかバチかの勝負を仕掛けてくるという現実。

だから先行した選手は突っ走る。
第1集団に残れなければ8位以内は手に入らないと考える。
そして男女ともロンドン、リオと、この傾向は強くなってきている。

「4年に1度しか開催されないオリンピックの特殊性」。
そして「進化のスピード」。
この2つを理解する必要がある。

2020年東京オリンピックは猛暑の中で開催されるであろう。
しかしロンドンまでに進化したランニング、リオデジャネイロまでに進化したバイクの両方が更に進化した戦いとなることが予想される。

もはやスイムで第1集団に入れない選手のオリンピック入賞は限りなくゼロに近い。
スイム、バイク、ランの3種目に苦手種目がある選手が入賞できる可能性は限りなく低い。
佐藤優香のスイム、上田藍のランニング
この2つが同時に求められる。
4年後に課されたハードルは果てしなく高い。

ueda
不可能を可能にする選手「上田藍」。
この気迫と取組姿勢から学ぶべきことは多い。

relay
U23/ジュニア男女混合リレー。
それぞれの選手が個性をフルに生かして戦った。
結果は8位入賞でしかないが内容には90点を付けたい。

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