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第125回コラム 「日本選手権で見えたこと」

オリンピック前年の日本選手権。
道路使用の問題でバイクコースは完全刷新。
緩やかな2回のアップダウン、細い道、180度ターン、狭いコーナーと少しだけ変化がもたらされた。
日本のバイクレベル低下を喰い止めるためには難易度の高いコースでレースが開催されることは必須だ。
もちろん安全面は優先されなければならない。

バイクのレベルを上げたいなら練習に取り入れれば良いと言う関係者も少なくない。
だが練習と実戦は違う。
コースが選手を育てるという一面があることを理解する必要がある。

さて女子は雨の中でレースが開催された。
新たなバイクコースに濡れた路面。
トランジション出口の段差に置かれたのは滑りやすいゴムシート。
これは本当に難しい。
バイクでの実力が試される設定となった。
技術に自信のない選手にとっては更に不安が増大したことだろう。
だが優勝候補の選手は誰一人として落車することはなかった。
残念ながらジュニア有力選手は転んだ。
上田藍選手に至っては前輪を滑らせバランスを崩したにも関わらず、集団から遅れることなく走っていた。
優勝候補の選手たちはほぼ全員がバイクを第1グループで走る。
今回は、その第1グループでスパートの掛け合い、ライバル選手へのけん制、集団からの飛び出しなどがあり、ツマラないレースとは無縁となった。
ランにおいても意地の張り合い、プライドを賭けた戦いを見せてもらった。
世界ランキングにも、ITUポイントにも何も関係ないけれど、「日本No1」を賭けた真剣勝負はやはり熱い。

男子も緊張感ある戦いとなった。
優勝候補の田山にとっては不運なレースとなってしまったが。
だが「もし落車しなかったらレース全部が変わっていた」と思わせる戦いは日本選手権9回優勝の意地かも知れない。

優勝するのは田山か細田。
これが私の事前の予想。
しかし見事に外れた。
アジア選手権ではランの途中まで先頭を走った古谷純平が今回は先頭を走り抜いた。
私にとっては嬉しい誤算、喜ぶべき失敗。
初優勝の古谷も嬉しかっただろうが、男子強化に係る関係者にとっても嬉しい結果だった。
ベテラン、中堅、若手、この3グループが必死に競り合うことで日本のレベルを上げることが可能だからだ。
4位 谷口、8位 杉原、9位 渡部と福井U23男子監督の指導する若手選手も踏ん張った。

まだまだ世界との差は大きい。
だが決して手の届かない場所ではない。
本気で望む者、本気で戦う者だけが、そのスタートラインに立つことができる。

リオデジャネイロ・オリンピックへの参加枠はこの段階で女子3枠、男子1枠。
枠数の増加はもちろんだが、一つでも上のステージで戦うことを期待してほしい。
選手たちは「期待に応える」能力を持っている。

エリート男女
【写真1】
日本選手権の記者会見。
このメンバーからリオデジャネイロへ・オリンピック代表が決まるだろう。
だが写真には写っていな選手が虎視眈々と一発逆転を狙っている。

Jr.エリート男女
【写真2】
2015年ジュニアランキングTOP3の男女選手。
2020年東京オリンピックにはこの中からも名乗りを上げる選手が出てくることを期待している。

中山俊行プロフィール

中山俊行(なかやま としゆき)

1962年生まれ
日本にトライアスロンが初めて紹介された18歳のときトライアスロンを始める。
日本人プロ第1号として、引退までの間、長年に渡りトップ選手として活躍。
引退後も全日本ナショナルチーム監督、チームNTT監督を歴任するなど、日本のトライアスロン界をその黎明期からリードし続けてきた「ミスタートライアスロン」。

【主な戦績など】
第1回、第2回 宮古島トライアスロン優勝
第1回、第2回 天草国際トライアスロン優勝
1989年から8年連続ITU世界選手権日本代表
アイアンマン世界選手権(ハワイ・コナ)最高順位17位(日本歴代2位)
初代・全日本ナショナルチーム監督
元・チームNTT監督
元・明治大学体育会自転車部監督

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